糖尿病

糖尿病とは

インスリンが分泌されなくなる(インスリン分泌障害)、もしくはインスリンは分泌されるが効きにくくなる(インスリン抵抗性)などのインスリン作用不足によって細胞に糖が正常に取り込めなくなり、慢性の高血糖となる疾患です。

こんな症状ありませんか?
  • みぞおちが痛む
  • 黒の便がでる
  • 吐き気がする
  • 食後しばらくたってから胃が痛む
  • 空腹時に胃の上部が痛む
考えられる病名
  • 胃炎
  • ピロリ菌が原因による胃炎
  • 十二指腸潰瘍
  • 胃潰瘍
  • 胃の排出機能低下
  • 早期胃がん

血糖調節に関わるホルモン

グルコース(ブドウ糖)は生体に最も重要なエネルギー源であり、血液中から全身の細胞に取り込まれます。
そして血中のグルコース濃度(血糖値)は様々なホルモンや神経系の働きにより一定に維持されています。
血糖値が低下してきたときに、血糖を上げる働きをするホルモンは①グルカゴン(膵臓ランゲルハンス島α細胞から分泌)、②カテコールアミン(副腎髄質から分泌)、③コルチゾール(副腎皮質から分泌)、④成長ホルモン(下垂体前葉から分泌)などです。一方、食後に過剰に糖が存在するときに、血糖を下げる働きをするホルモンはインスリンただ1つです。

血糖を下げるただ1つのホルモン -インスリン-

インスリンは肝臓、筋肉、脂肪組織に作用して血糖値を下げる働きをします

血糖が高いときは、インスリンの作用により糖は肝臓・筋肉・脂肪組織で取り込まれ、肝臓、筋肉では糖をグリコーゲンに変えて貯蔵、脂肪組織では糖を脂肪へ変えて貯蔵し血糖値を下げています。

分類

①1型糖尿病

•膵β細胞の破壊によりインスリン分泌が急速・不可逆的に低下し高血糖となります。最終的にインスリン分泌能は廃絶します

•自己抗体が検出される自己免疫性と自己抗体が証明できない特発性に分類されます

•糖尿病全体の約5%以下

②2型糖尿病

• 糖尿病の遺伝因子に過食・運動不足・ストレス・肥満などの環境因子が加わってインスリン作用不足が生じて発症します
• 糖尿病の大半(約95%)を占め、生活習慣病の代表ともいうべき疾患です

糖尿病の進行・主な合併症

高血糖になっても初期は無症状ですが、管理せずに放置すると著しく生活の質を低下させる合併症が生じたり、虚血性心疾患などのリスクを高めたりします
三大合併症:①糖尿病性網膜症 ②糖尿病性腎症 ③糖尿病性神経障害
そのほかの合併症:
動脈硬化による虚血性心疾患・脳梗塞・閉塞性動脈硬化症、易感染性、昏睡、糖尿病性足病変(潰瘍、壊疽)、歯周病、白内障、骨粗鬆症、認知症など

糖尿病性網膜症

硝子体出血や牽引性網膜剥離をきたし、視力が低下します。
放置すると失明に至ります。

糖尿病性腎症

末梢神経障害が進行すると、温度や痛みを感じにくくなり熱傷やケガの原因となります。
(動脈硬化や感染などと合わさり「足の壊疽」などになります。)
比較的早期から出現し頻度も高いです。
自律神経障害も生じ、起立性低血圧、消化器症状(下痢、便秘)、発汗異常、神経因性膀胱(排尿障害)、勃起障害(ED)、無自覚性の低血糖なども起こります。

虚血性心疾患・脳梗塞・閉塞性動脈硬化症

糖尿病では、動脈硬化が来しやすい。また、高血糖の持続に加え、肥満、脂質異常症、高血圧といったメタボリックシンドロームにおける危険因子が重複するほど、動脈硬化が発症・伸展しやすくなります。喫煙などの生活習慣が加わるとその率は更に上昇します。

易感染性

糖尿病では好中球機能低下をはじめとする免疫機能低下、血流障害、神経障害などにより細菌、ウイルス、結核菌、真菌などに感染しやすい状態になっています。
呼吸器感染では肺炎・肺結核、尿路感染では習慣性の膀胱炎・腎盂腎炎皮膚・軟部組織感染症ではカンジダ症・糖尿病足病変、口腔内感染では歯周病などが挙げられます。

糖尿病性足病変

神経障害と血流障害を基礎として、外傷や感染が加わり、胼胝(たこ)、鶏眼(うおのめ)、爪白癬、陥入爪、乾燥、亀裂、靴ずれ、足の変形、潰瘍、壊疽など多彩な病変をきたします。

糖尿病の診断

糖尿病の診断には、①高血糖の診断(血糖値検査)と②慢性であることの診断 (HbA1cなど)が必要です
空腹時血糖値が126mg/dl以上、75g経口ブドウ糖負荷試験2時間が200mg/dl 以上、随時血糖が200mg/dl以上のいずれかを満たすと糖尿病型となります
長期間(約2か月)の平均血糖値を反映する検査HbA1cが6.5%以上で糖尿病型となります
糖尿病の典型的な自覚症状は口渇、多飲、多尿、体重減少です

血糖値を用いた糖代謝異常の判定

正常型 ●空腹時血糖値 110mg/dl未満 かつ
●75g経口ブドウ糖負荷試験2時間 140mg/dl未満
境界型 ●正常型と糖尿病型のどちらにも属さないもの
糖尿病型 ●空腹時血糖値 126mg/dl以上 または
●75g経口ブドウ糖負荷試験2時間 200mg/dl以上 または
●随時血糖値 200mg/dl以上
これらのいずれかを満たすもの

糖尿病の検査方法はいくつかありますが、主に、
①空腹時血糖値
②随時血糖値
③75g経口ブドウ糖負荷試験
④HbA1cなど
血液検査で測定し診断します。

①空腹時血糖値:食事から10時間以上あけて測定した血糖値です。
一般には前日夜9時以降を絶食とし、翌朝食前の採血です。
②随時血糖:食事とは関係なく測定した血糖値です。
③75g経口ブドウ糖負荷試験:食事から10時間以上あけた後に、ブドウ糖75gを飲んで血糖値を測定する検査です。空腹時、30分、1時間と2時間後に採血します。
④HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)
血液検査で測定する項目の一つで、長期間(約2か月)の平均血糖値を反映する検査です。
HbA1c 6.5%以上が糖尿病型となります。

血糖値を用いた糖代謝異常の判定
正常型  空腹時血糖値 110mg/dl未満 かつ
 75g経口ブドウ糖負荷試験2時間 140mg/dl未満
境界型   正常型と糖尿病型のどちらにも属さないもの
糖尿病型   空腹時血糖値 126mg/dl以上 または
 75g経口ブドウ糖負荷試験2時間 200mg/dl以上 または
 随時血糖値 200mg/dl以上
これらのいずれかを満たすもの

血糖値とHbA1cともに糖尿病型であれば糖尿病と診断されます。どちらかの場
合は再検査を行って診断していきます。

糖尿病治療の流れ

まず適切な食事療法や運動療法を行い、生活習慣の改善していきコントロー ル目標が不達成の場合に病態に応じて経口血糖降下薬、インスリン療法を検 討していきます

食事療法

食事療法の基本は、食事を規則的にし、炭水化物、蛋白質、脂質のバランスをキープしたまま総摂取エネルギーを適正化することであり、炭水化物や脂質の割合を極端に下げるようなダイエットは望ましくありません。

適正なエネルギー摂取量

エネルギー摂取量(kcal)=①標準体重×②身体活動量

①標準体重(kg)=(身長〔m〕)2×22
②身体活動量の目安(kcal/kg標準体重)
   軽労作(デスクワーク主体):25~30
   普通の労作(立ち仕事主体):30~35
   重い労作(力仕事主体):35~
  *ただし肥満者の場合には、25~30として体重減少を目指す。

望ましい栄養バランス

①指示エネルギーのうち50~60%を炭水化物(4kcal/1g)でとる。
②蛋白質を(4kcal/1g)を標準体重1kgあたり1.0~1.2gとる。
③残りのエネルギーを脂質(9kcal/1g)でとる。

〈摂取エネルギー算出例〉
男性 37歳
身長172㎝
体重70㎏
会社員(経理)

①標準体重 (1.72〔m〕)2×22=65
②身体活動量25kcal/kg
⇒エネルギー摂取量 65×25=1625kcal
炭水化物:1625×0.6=975kcal
蛋白質:1.2×65×4=312kcal
脂質:1625-(975+312)=338kcal

運動療法

運動療法の目的は肥満の解消と思われがちですが、実は、運動のみで痩せるのはとても難しく、肥満の解消には食事療法の方が重要です。
運動療法ではやせること以上に、食後の運動によって即効的に食後の高血糖を抑える効果や、運動の継続で筋肉量が増えることによりインスリン感受性を上げることが重要な目的になります。

運動療法の内容としては筋疲労が起こりにくく継続しやすい有酸素運動を中心に筋力を向上させるレジスタンス運動を組み合わせて行います。

薬物治療

経口血糖降下薬

食事・運動療法が適切に行われているにもかかわらず、十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病に対して使用されます。
7種類の経口血糖降下薬があり病態に合わせて選択されます。

経口血糖降下薬の種類と作用

〔インスリン抵抗性改善系〕
①ビグアナイド薬 
インスリン分泌を刺激せずに、様々な機序(特に肝臓への糖新生抑制作用が強い、腸での糖吸収抑制や筋・脂肪でのインスリン抵抗性改善にも作用する)で抗糖尿病作用を発揮します。

②チアゾリジン薬 
骨格筋や肝臓でのインスリン感受性を改善します。


〔インスリン分泌促進系〕  
③スルホニル尿素薬(SU薬) 
膵β細胞のスルホニル尿素受容体に結合しインスリン分泌を刺激します。作用発現までに時間がかかり空腹時高血糖を是正します。

④速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬) 
SU薬と同様に、膵β細胞のスルホニル尿素受容体に結合しインスリン分泌を刺激します。より速やかなインスリン分泌を促進し、食後高血糖を是正します。(インスリン分泌パターンの改善)

⑤DPP-4阻害薬 
膵細胞に作用するインクレチン血糖濃度依存性にインスリン分泌を促進し、またグルカゴン(血糖を上げる作用を持つホルモン)の分泌を抑制します。
 
〔糖吸収・排泄調節系〕
⑥αグルコシダーゼ阻害薬(α-GI) 
小腸での炭水化物の吸収を遅らせることにより、血糖上昇のピークは遅く、低くなり、遅れていたインスリン分泌のピークに近づき、食後高血糖を改善します。

⑦SGLT2阻害薬 
糖輸送蛋白の一つであるSGLT2を阻害することにより、腎での糖の再吸収を阻害し、糖を血液中に戻さず、尿中に排泄することで、血糖値を低下させます。

これら経口血糖降下薬で効果が得られない場合は、GLP-1受容体作動薬やイン
スリン療法などの注射製剤を検討します。

〔皮下注射 インスリン分泌促進薬〕
〈GLP-1受容体作動薬〉 
DPP-4に分解されにくいGLP-1受容体作動薬が膵細胞に作用し、インスリン分泌促進とグルカゴン分泌抑制がおこります。

インスリン療法

•外部からインスリンを投与することにより、できる限り正常に近いインスリン分泌動態を得ることを目的とします

•インスリンが絶対的に欠乏する1型糖尿病はもちろんのこと、適切な治療を行ってもなお良好な血糖コントロールが得られない2型糖尿病や厳密な血糖管理が必要な糖尿病合併妊娠、昏睡などで緊急に血糖を下げる必要がある場合などでも行われます

血糖コントロール目標

合併症予防のためには、HbA1c7.0未満を目標にすることが推奨されています。
この値を中心に、年齢、併存症などそれぞれの状況を考慮して目標値を設定します。

病気の早期発見や早期治療のお手伝いを

当院は地元のみなさまの健康をまもり、よりよい生活を送っていただくために、患者さん一人一人の健康管理のお手伝いを致します。

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